【第3章】日本のeスポーツの課題と今後の展望

みなさんこんばんは。うらたかです。

本日は第三章「日本はなぜeスポーツ後進国なのか」を投稿します。

 

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第3章 日本はなぜeスポーツ後進国なのか

 

日本は、任天堂の「スーパーマリオブラザーズ」シリーズやSQUARE ENIXの「ドラゴンクエスト」シリーズなど、世界的に有名なゲームを数多く作り出し、『ゲーム大国』と呼ばれることも多い。そんなゲーム大国の日本だが、前章で話した経済規模を見てもわかる通り、eスポーツの分野に限って言えば、海外に大きな遅れを取っていると言わざるを得ない。主にeスポーツの啓発活動を行っているeスポーツコミュニケーションズ合同会社の代表である筧誠一郎氏は自身の著書で、「日本のeスポーツ界は世界から7年取り残されている」と述べている。この章では、日本がeスポーツ後進国と呼ばれる理由について論じていく。

 

第1節 ゲームコンテンツの楽しみ方の違い

 

 日本がeスポーツ後進国である理由の一つに、日本と海外の人気のゲームジャンルとそれをプレイするためのハードウェア機器に大きな違いがある。

 まずは人気のゲームジャンルの違いだが、無数にあるゲームコンテンツのうち、日本では、『ロールプレイングゲームRPG)』『アドベンチャーゲーム』『アクションゲーム』が人気である。これらのゲームは一部を除いて競技性がほとんどなく、個人で楽しむコンテンツが中心になっている。

反対に、海外で人気のゲームジャンルは『リアルタイム・ストラテジーRTS)』『マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ(MOBA)』『ファーストパーソン・シューティングFPS)』の3つである。これらのゲームジャンルには、複数のプレイヤーがチームで、あるいは個人で勝負を行い、勝敗を決めるという共通点がある。競技性が強いことから、リアルスポーツと近く見られることも多い。特にチーム対抗戦ができることは、複雑な戦略・チームワーク・個人のプレイスキルなど、見る側にとっても楽しめるコンテンツになる。

 次にハードウェア機器の違いである。日本では、ファミリーコンピュータプレイステーションなどをはじめとした優れたゲーム専用機の普及が他国よりも早かった。ゲーム専用機はテレビに接続するだけですぐにプレイを始められ、ソフトも充実している。日本の家庭であれば、どこでもゲーム専用機が1台以上あるのが当たり前というほどに、ゲーム専用機は普及している。

 一方、欧米や他のアジア諸国では、ゲーム専用機が高価であったこともあり、日本ほどには普及しなかった。また、大人がビデオゲームを楽しむのが当たり前だという文化もあり、ビデオゲームのプラットフォームとなったのは、主にパソコンだった。ゲーム専用機と違い、パソコンは家族全体で使うことが多く、ビデオゲームにしても、一人だけで楽しむよりも、複数人で競いながら楽しむことが一般的だった。また第2章第3節でも言った、LANパーティーの文化が盛んになったこともあり、「ビデオゲームは複数人で競って楽しむもの」であるという、日本との明らかな違いが生まれた。

 こういった、ゲームの嗜好の違いやプレイするハードウェアの違い、ゲームの楽しみ方の違いが、eスポーツという文化の捉え方にも影響している。

 

 

 

第2節 法規制による大会開催のハードルの高さ

 

 海外のeスポーツの大会が注目され、日本国内でも話題になっている理由に、賞金額が非常に高額であることが挙げられる。例えば、2019年7月に開催されたTPSゲームの『Fortnite(フォートナイト)』の世界大会の賞金額は、優勝賞金が3億2500万円、賞金総額は33憶を超えている。このことは、参加者や参加チームにとっての大きなモチベーションとなるだろう。

 一方日本では、「景品表示法」「刑法(賭博および富くじに関する罪)」「風俗営業法」の3つの法律に阻まれ、高額な賞金がでる大会を開催するのが難しい。

 

1つ目の法律である景品表示法は、正式には「不当景品類及び不当表示防止法」と言う。この法律が指す「景品類」とは、「顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の取引に付随して相手方に提供する物品、金銭その他経済上の利益」のことである。eスポーツにおいて、高額な大会賞金の提供の機会を増加させていくことは、eスポーツの発展と振興のための重要な課題のひとつである。しかし、eスポーツは、題材として各ゲーム会社が開発・販売する商品を取り扱うものであるため、商品の宣伝・広告に関する規制については留意しなければならない。景品類であると判断されれば、10万円以上の賞金を提供することができず、大会の規模は小さくならざるを得ない。景品類に該当するか否かは、①顧客を誘引するための手段かどうか②取引に付随して提供されるものか否か(取引付随性)の2点の有無によって判定される。これに関して、2016年に行われた法令適用事前確認手続きに対する消費者庁の回答によれば、以下のように整理される。

ゲームの種類・性質

①   顧客を誘引するための手段

②   取引付随性

景品類に該当するか

ゲームを購入することではじめてプレイできるゲーム

あり

あり

該当する

プレイごとに課金が必要なゲーム

あり

あり

該当する

基本プレイは無料だが、課金要素がゲームの強弱に影響するゲーム

あり

 

あり

該当する

基本プレイが無料であり、課金要素が強弱に影響しないゲーム

なし

なし

該当する

 

(2)刑法(賭博および富くじに関する罪)

 

2つ目に、参加者から参加料を徴収して開催するような大会(参加料徴収型大会)の場合、刑法上の、「賭博」に該当する可能性がある。刑法上の「賭博」とは、「①財物を賭け②その得喪を争うこと」をいう。参加料徴収型大会では、成績優秀者は参加料を原資とした賞金を得るが、他の参加者は参加料を失う。つまり、「財物を賭けその得喪を争って」いるのである。

 以上より、参加料徴収型大会は刑法上の「賭博」に該当すると考えられ、参加者は賭博を行った者として賭博罪に問われるおそれがある。

 

 

(3)風俗営業

 

最後に3つ目の風俗営業法に関してだが、これは賞金額の制限や賭博罪についてではなく、そもそもの大会開催を規制する法律である。

 賞金制大会の会場に複数のゲーム機を設置して、来場者にプレイさせることを目的に

する場合、当該大会自体が、風俗営業法上の遊技場営業に該当する可能性がある。風俗営業法では、風俗営業を営もうとするものは、原則として管轄の都道府県公安委員会の許可を受けなければならないとされている。ゲーム大会の実施が風俗営業に該当する場合、公安委員会の営業許可の取得が必要となり、会場の照度や年少者の入場制限など、営業内容に各種の制限が生じる。さらに、風俗営業を営む者が、遊戯の結果に応じて商品を提供することは、風俗営業法23条により禁止されているため、賞金制大会の実施は風営法上許されないことになってしまう。

 

第3節 アンバランスな収益構造

 

 eスポーツにおけるマーケティングの収益構造は、サッカーや野球などの従来のスポーツと同じように、①スポンサー収入②放送権収入③観客入場料収入(チケット)④マーチャンダイジング収入(グッズ)の4つから成り立っている。日本はなかでもスポンサー収入の割合が高く、75.9%を占めている。eスポーツに対するメディアや企業の関心は日々高まり、スポンサーシップを表明する企業は増加している。しかし、逆にスポンサー収入以外の項目が占める割合は軒並み低く、アンバランスな収益構造である。実際にサッカーのJ1リーグチームの平均収益構造と比べてみても、その特異性は際立っている。

なぜこのような収益構造になってしまうのか、その理由は第2節でも触れたが、国内で大会を開催しようとしたときに越えなければならないハードルが多いことである。大会の開催数が少なければ、当然チケット収入や試合の放映権収入は少なくなる。さらに、試合会場での物販収入が見込めないことも考えれば、大会開催数がマーチャンダイジング収入にまで影響を及ぼしている可能性も否めない。

 

 

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  • 作者:筧 誠一郎
  • 発売日: 2019/04/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)